F値

F値とは、レンズの「絞り」の開き具合を示す数値であり、写真の明るさと、ピントが合っているように見える範囲である「被写界深度」の二つに大きな影響を与える。
このF値は、レンズの焦点距離を有効口径(光が通る開口部の直径)で割った値で算出される。そのため、F値の数字が小さいほどレンズの絞りが大きく開いている状態であり、より多くの光がイメージセンサーに届くことになる。結果として、写真は明るく写る。同時に、F値が小さいほど被写界深度は浅くなり、ピントを合わせた被写体以外の背景や手前が大きくぼける。これは、ポートレート撮影などで被写体を際立たせたい場合や、光量の少ない暗い場所で撮影する際に特に有効な特性だ。
一方、F値の数字が大きいほどレンズの絞りは小さく絞られ、イメージセンサーに届く光の量は少なくなるため、写真は暗く写る。その代わり、F値が大きいほど被写界深度は深くなり、手前から奥まで広い範囲にわたってピントが合った、シャープな写真が得られる。風景写真などで、手前の草木から遠くの山々まで全てを鮮明に写し込みたい場合にこの設定が用いられることが多い。
F値は、一般的に「F2.8」「F4」「F5.6」「F8」「F11」「F16」のように表記され、数字が小さくなるほど絞りが開き、大きくなるほど絞りが閉じる。この数字は、一段階変わるごとにイメージセンサーに届く光の量が半分になったり、倍になったりする関係性を持つ。例えば、F4からF2.8に絞りを開くと、取り込む光の量が2倍になるため、写真は一段階明るくなる。
このように、F値は単に写真の明るさを調整するだけでなく、写真のボケ具合をコントロールし、撮影者の意図を反映した表現を生み出すための重要な要素なのだ。

F値の「F」は、英語の「focal(焦点の)」という言葉に由来している。
F値は、レンズの焦点距離を有効口径(レンズの絞りが開いたときの直径)で割って算出される数値であり、この計算式の中に「焦点距離(focal length)」が含まれるため、その頭文字が使われるようになったのだ。
つまり、「F」はレンズの特性、特に光を集める能力や、それが焦点にどのように関連するかを示すシンボルと言える。

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